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A-Co-Labo研究者の履歴書

人々の心を癒すロボットを研究開発する林里奈

本シリーズ【A-Co-Labo研究者の履歴書】では、flaskoのサポーターであり、研究知のシェアリングサービスを行う株式会社A-Co-Laboに登録している多様なパートナー研究者たちが、自身の研究内容とともに、研究者としての歩みや考え方を伝えていきます。

今回は、自動車部品メーカーに勤務しながら、独立研究者として人々の心を癒やしてくれる新たなロボットの開発を進めている林 里奈さんです。

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林 里奈

はやし りな

大阪大学大学院工学研究科博士前期課程知能・機能創成工学専攻修了後、株式会社デンソーに入社。出向先の株式会社日本自動車部品総合研究所にて自動運転システムやロボットの研究開発業務に従事する傍ら、名古屋工業大学大学院工学研究科博士後期課程情報工学専攻に進学し、癒しロボットの研究開発を開始。博士(工学)取得。現在は株式会社デンソーにてデザイン評価業務に従事する傍ら、独立研究者として癒しロボットの研究開発を継続中。

きっかけは一目惚れ

一緒にいるとなんだかほんわかして(癒されて)しまう……。そんなロボットを生み出したいと、日々奮闘している独立研究者の林です。自動車部品メーカーに勤務する傍ら、癒しを引き出す要素の検証や、検証結果に基づく癒しロボットの開発を独自に進めています。

私がロボット研究者を志したのは、中学2年生の頃。当時、父親以上の研究者になりたいと意気込んだものの、心躍る研究分野に出会えず、ロボットに漠然とした興味を抱いている状態でした。見兼ねた父親が、ロボットの展示会を視察した際、少しでも私の学びに繋がればと持ち帰ってきた無数の技術資料の中に、産業技術総合研究所の柴田さんが開発された癒しロボット「パロ」のチラシがありました。

パロは、癒しロボットの草分け的存在で、その高い癒し効果から、世界で最も癒し効果のあるロボットとしてギネス世界記録に認定されており、現在も高齢者福祉施設等で活躍しています。タテゴトアザラシの赤ちゃんを模したぬいぐるみのような外観で、当時は、配線が剥き出しで無骨なロボットがまだ多い時代だったこともあり、そのあまりの可愛さに思わず一目惚れしてしまいました。

パロとの出会いをきっかけに思い出したのが、小学4年生の頃「なかよし」で連載されていた少女漫画「アキハバラ電脳組パタPi!」に描かれていた「言葉は通じないけど心はつながっている主人公」と電脳ペット「デンスケ」の関係に憧れて、自作キャラクターのフェルトぬいぐるみをどうすれば動かすことができるのか、子供だてらに考えた時のワクワク感でした。この時に芽生えた「パロのような人々の心を癒す可愛いロボットを開発したい」という想いが、私の原点です。

転機となった苦い思い出

パロとの出会い以降、ロボット研究者を目指し始めた私は、ロボット系研究室がある大学院に進学しました。そして、そろそろ博士後期課程進学に向けて動き始めなければと考えていた博士前期課程1年生の頃に、大きな転機が訪れました。

私が進学した大学院では、研究力とビジネス力を兼ね備えた人材の育成に力を入れており、企業から招聘された講師の方が担当する講義がカリキュラムに組み込まれていました。事業計画のいろはを学び、5人1組で事業計画を作成してコンテスト形式で発表するという「新事業創成論」も、その一つです。

私は同じ研究室の友人達とチームを組み、魚を模した観賞用水槽の清掃ロボットを核とした事業案を立案し、意気揚々と中間報告会に臨みました。その際、講師の方からいただいたコメントが(ショックのあまり詳しくは覚えていないのですが)ロボットを開発したいだけの自分本位の事業案であること、ユーザ目線に立って物事を考えられないのであれば工学者失格であることを告げられたと記憶しています。

工学とは、公共の安全、健康、福祉のために有用な事物や快適な環境を構築することを目的とする学問です。このままでは本当に工学者失格になってしまうと、講師の方に相談し、企業にて経験を積み、ユーザ目線に立って物事を考えられるようになってから、改めて博士後期課程に進学しようと決めました。

ユーザの想いを大切にしたい

こうして自動車部品メーカーに就職したものの、ユーザ目線に立って物事を考えることの難しさを痛感する日々です。自動車普及の立役者であるヘンリー・フォードが残したとされる「もし顧客に望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう」という有名な格言が、その難しさを如実に物語っています。

主な移動手段が馬だった時代、自動車を知らない人々にはその利便性を想像できないため、「自動車が欲しい」とは答えられません。ユーザ目線に立って物事を考えるとは、「もっと速い馬が欲しい」という答えに隠された、目的地に早く到着したいという本質的な需要を見抜くことなのです。

ユーザの言葉から本質的な需要を見抜き、研究に活かす方法はまだ見つかりませんが、試行錯誤を続けながら辿り着いたのが、ユーザから意見を聞き、自分が疑問に感じたことを検証により明らかにするという研究スタイルです。

例えば、「硬いロボットと比較して柔らかいロボットの方が癒し効果が高い」ということを明らかにした研究は、硬いロボットと比較して柔らかいロボットはお手入れが大変というユーザの声が発端です。硬いロボットと柔らかいロボット、癒し効果が同程度であれば、ユーザの意見を採用して硬いロボットを開発すべきですし、柔らかいロボットの方が癒し効果が高いのであれば、お手入れを簡単にする方法を模索すべきです。そのためには、硬いロボットと比較して柔らかいロボットの方が癒し効果が高いという当たり前に感じることであっても、科学的に検証する必要があると考えたのです。

ユーザの声を頼りに、一つ一つ科学的な事実を積み重ねていくことにより、少しでもユーザ目線に立って物事を考えられるようになる。そう信じています。

癒やしロボットの商品化を夢見て

現在、これまでの研究過程で得られた知見を総動員して、新しい癒しロボット「ほんわかにゃんころ」を開発しています。癒しを必要としている方々に癒しロボットを送り届けることが最終目標ですが、まずは、共に癒しロボットを研究開発してくださる仲間を増やすため、ほんわかにゃんころを研究開発用癒しロボットとして広く公開することはできないか、模索中です。

独立研究者である私は、基本的に研究費助成制度に応募することができないため、研究費は限られていますし、本業が忙しくなれば当然研究に充てられる時間も少なくなります。ないない尽くしではありますが、いつか開発した癒しロボットとふれあった人が笑顔になる……。そんな日を夢見て、研究者の道を歩んでいきます。

<A-Co-Laboについて>

株式会社A-Co-Laboには、現在約100名のパートナー研究者が登録。それら研究者の持つ研究知(研究者のもつ知識や知恵。研究内容だけでなく、課題発見能力や課題解決能力なども含む)を企業の研究開発はもちろん、新規事業や様々な課題の解決に役立てています。

記事で紹介したパートナー研究者に話を聞いてみたい、自身がパートナーとして登録したいなどあれば、下記ホームページよりお気軽にご連絡ください。
A-Co-Labo HP:https://www.a-co-labo.co.jp/

またnote『エコラボnote』では、これまでの事例やQ&Aなども掲載しています。ぜひご覧ください。
https://note.com/a_co_labo/

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