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太陽電池と太陽光発電の基礎知識をざっくり解説

昨今、地球温暖化対策として温室効果ガスの削減が求められるなか、再生可能エネルギーの導入が急ピッチで進められている。なかでも太陽光発電は、2019年度に日本における全発電の凡そ7%のエネルギーを担うまでになり、再生可能エネルギーの主力となるエネルギー源となっている。

しかし一口に「太陽光発電」と言っても、その発電装置である太陽電池には色々な素材や種類があることを知っているだろうか? 

今回の科学コラムでは、光を電気に変換する太陽光発電の技術がどのように発見され発達してきたか、そして太陽光発電にはどんな種類がありどう違うのかなど、知っておきたい基礎知識をコンパクトに紹介していこう。

まずは太陽電池の簡単な歴史から

そもそも光を電気に変換する技術が生まれたのは19世紀のこと。1839年にフランスの物理学者アレクサンドル・エドモン・ベクレルが、電解液中の銀電極に光を当てる事で電流が流れる事を見出し、続いて1877年に英国のアレクサンダー・グラハム・ベル(あの電話の発明で有名なベルだ)が、セレンに光を照射した時に電気が発生する現象を発見した。

白熱電球の発明も1870年代後半だから、「光から電気を生み出す」技術と、その逆に「電気から光を生み出す」技術とは、ほぼ同時期に発明されたことになる。


その後、セレンと亜酸化銅を使った太陽電池が使われるようになったが、この頃の太陽電池の光エネルギーから電気への変換効率は、わずかおよそ1%程度に留まるものだった。

やがて1954年にベル研究所が新しいタイプの太陽電池を開発し、これが技術的なブレークスルーとなった。シリコン単結晶を使い、変換効率は6%と、それまでのセレン太陽電池をはるかに上回るレベルとなった。シリコン単結晶は現在主流の太陽電池と同じだ。つまり1950年代には、現在の太陽電池の原型が開発されたことになる。

ベル研究所は、太陽電池に留まらず、エレクトロニクス分野で様々な発明をした。代表的なものはトランジスタで、1940年代にゲルマニウムを使ったトランジスタ、1950年代にはシリコンを使ったトランジスタを開発している。先の太陽電池の開発の歴史と比較すると、これら二つはほぼ同時期に開発されていった事がわかる。ビジネスとしても、太陽電池とトランジスタとは、いわゆる「半導体産業」としてまとめられるものだ。

ちなみに、最近は照明としてLED電球が普及してきたが、これは「半導体を使って電気を光に変える」技術だ。太陽電池とLEDは共に半導体でありながら、働き方を逆にしたものなのだ。

太陽電池の種類を比較する

さて、現在の太陽電池といえば、シリコン太陽電池が全盛期だが、実は他にも色々な種類の太陽電池がある。それを簡単に種類分けすると以下のようにまとめられる。

結晶太陽電池というのはシリコンを用いた太陽電池の事で、パソコンに使われるCPU、メモリなどと同じ材料だ。シリコンの塊から厚さ200um程度に切り出して太陽電池にする。厚みは年賀状一枚程度だ。

薄膜太陽電池は厚みが0.2um程度と金箔程度の薄さだ。結晶太陽電池と異なり、ガスをプラズマで分解して基板に着膜させて太陽電池にする。薄膜太陽電池の特徴としては「多接合化」できる点があげられる。これは種類の異なる太陽電池を直列に重ねる事ができる技術だ。

ⅢⅤ族太陽電池は、光の吸収が強いという特徴がある。また薄膜で作る事ができるので、多接合化できる上に、キャリアライフタイム(寿命)も長いという優れた太陽電池だ。ただし高価であるために一般市場には出回っておらず、主に人工衛星などの宇宙開発用として使われている。

CIS太陽電池はⅢⅤ族の廉価版のような位置付けとなる。メガソーラーや住宅用など、一般市場に出回っているタイプだ。

太陽電池の良し悪しを決める3要素

ところで太陽電池の変換効率の良し悪しは、何で決まっているのだろう? それは、①光の吸収が強いこと、②電気抵抗が低いこと、③発生した電子をロスなく使えること、の3つだ。

①光の吸収が強いこと:これは直感的にも分かり易いだろうが、より多くの太陽の光を吸収する方が、より多くの電気エネルギーを生み出すことができる。

②電気抵抗が低いこと:電気製品と同じで、電池の抵抗が低いと「省エネ」になる。つまり、同じ電気エネルギーを生み出すために必要な光エネルギーが少なくて済むということだ。最近では世界的に白熱電球を使わないようにする動きがあるが、これも白熱電球というのがエネルギーロスの大きい電球だからだ。抵抗が高くて発熱が多く、エネルギーを上手く光に変換できないためだ。同じように太陽電池でも、抵抗が高いと光エネルギーを電気エネルギーに変える事ができなくなる。

③発生した電子をロスなく使えること:これは太陽電池としてとくに重要なポイントだ。太陽電池の中で発生した電子を「高速道路を走る車」のように考えると、まず何より「道がきれいに舗装されていて事故を起こさない事」が大事だ。太陽電池に置き換えると、それは「原子が規則正しく並んでいるきれいな結晶」ということになる。

以上、今回のコラムでは太陽電池技術の発見・発展の歴史と、様々な太陽電池の種類と特徴について簡単に紹介した。太陽電池には様々な種類があるが、高い変換効率の実現に求められる要件はどの太陽電池に対しても同じというのがポイントだ。

住宅用や発電用として最適な太陽電池、宇宙用太陽電池として最適な太陽電池など、用途によって求められる種類は変わってくる。今後、普及が広がるにつれて、さらに新しい用途開発が必要になっていくことだろう。そしてこのような新しい用途開発が、新しい太陽電池の開発を促していくことになるのだ。

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