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A-Co-Labo研究者の履歴書

ビデオカメラ開発一筋から独立、技術支援を続ける土肥博

本シリーズ【A-Co-Labo研究者の履歴書】では、flaskoのサポーターであり、研究知のシェアリングサービスを行う株式会社A-Co-Laboに登録している多様なパートナー研究者たちが、自身の研究内容とともに、研究者としての歩みや考え方を伝えていきます。

今回は、大手電機メーカーのエンジニアとしてビデオカメラの開発に長年携わった後、現在も個人事業主としてカメラ開発の技術支援をしつつインテリジェントカメラの研究開発を進めている土肥博さんです。

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土肥 博

どひ ひろし

1985年,徳島大学大学院光電子工学専攻修了。同年、大手電機メーカーにて主に民生用3板式ビデオカメラの要素開発、設計、量産化を担当。その後、海外、国内企業でイメージセンサの企画立案、評価システム構築やインテリジェントカメラの開発などに従事。2020年「蒼星技研」(https://sosei-giken.com)を開業。カメラ関連技術支援等を展開。趣味、特技:ウォーキング、音楽鑑賞(HR/HM系)、韓国語。

大手電機メーカーでビデオカメラ開発一筋に

A-Co-Laboパートナー研究者の土肥博です。私は1985年に大手電機メーカーに入社し、主に民生用3板式ビデオカメラの要素開発、設計、量産化を担当し、その後は海外・国内の企業で、ビデオカメラだけでなく、イメージセンサの企画立案・評価システム構築や、顔認証に代表されるインテリジェントカメラの開発などに従事してきました。

私は最後に勤めた会社を2020年に定年退職しましたが、それを機に個人事業主として「蒼星技研」を立ち上げ、現在も引き続きカメラ開発・設計の技術支援等を展開しています。

カメラに関係する仕事に就いてから今年で37年目になりますが、ここまでずっとカメラ開発に続けて携われたことは非常に幸運なことでした。

入社当時はビデオテープレコーダ開発の最盛期であり、その花形は複雑な駆動で膨大な映像情報をテープ上に正確に記録する機構開発にありました。しかしそれが半導体メモリーに置き換わり、携帯機器に内蔵されるようになると、機構系は完全に無くなってしまいました。

一方、カメラは性能・機能・形状は大きく変わったとはいえ、レンズ、イメージセンサ、信号処理という構造そのものに変化はないので、継続して同じコンセプトの研究・開発を続けることができました。

さらに、近年ではスマートフォンに代表されるように、カメラ機能がトップレベルの差別化アイテムとなり、また映像だけでなくセンシングや認証システムとして用いられ始めています。カメラ技術に対する市場のニーズは高まる一方であり、カメラエンジニアに対する期待感もますます大きくなっています。

私は徳島大学大学院光電子工学研究室にて、後の“LED王国”徳島の礎を築かれた福井萬壽夫先生のご指導のもと、光と電子との結合モードである「表面プラズモンポラリトン」の研究を行っておりました。この光関連の研究を強く勧めていただいたことが、結果的に現在に至るカメラ開発人生の起点となりました。

というのは、私が最初の会社に入社した年は、まさにCCDイメージセンサを搭載した民生用ビデオカメラ初号機の発売の年であり、将来に向けてカメラエンジニアの確保が急がれていたからです。ですので光と電子を研究していた私がカメラ開発の部門に配属されたのは、ごく自然の流れでした(実際に当時の上司からもそのように聞きました)。

40年近く前の出来事ではありますが、カメラ開発エンジニアとして現在に至る経歴への縁めいたものを感じずにはおれません。

新技術で高画質ビデオカメラの小型化を実現

私のカメラ開発エンジニアとしての長い経歴の中で、一番長期にわたって携わってきたのは民生用3板式ビデオカメラの開発です。

3板式とは、光を3原色(R,G,B)に分け、それぞれを3枚のイメージセンサで受光するシステムのことです。放送局向けカメラに使われている技術を民生用に展開したのです。当然画質は大幅にアップしますが、形状、コスト、電力などは民生用としては全く話になりませんでした。そこで開発の当初から“画素ずらし”という手法を取り入れることにしました。

イメージセンサ内部には「画素」と呼ばれる微細な受光部が水平垂直に整然と並んでいるのですが、G(緑)のイメージセンサに対してR(赤)、B(青)のイメージセンサを半画素分ずらして固定することで、信号処理における画素数を水平・垂直方向にそれぞれ2倍(総画素数4倍)相当にする技術です。この“画素ずらし”の導入により、単板イメージセンサと同一の画素数を、半分の大きさのイメージセンサで実現することができたわけです。

その成果はレンズ径を大幅に小さくすることにつながり、結果として非常にコンパクトなビデオカメラを具現化することができました。同時に構成部材も小型になり、コストダウンにも大きく寄与することができました。

ただし“画素ずらし”の採用により、イメージセンサの位置合わせは数倍困難になりました。実際に、髪の毛の太さの数百分の1もの精度が求められていました。また、もともとイメージセンサを3個駆動するために熱に対する課題があったのですが、コンパクト化により状況が一層厳しくなりました。

これらの課題を、多くの部門の助けを受けながら地道に対策していくことで、最終的に製品化に漕ぎつけることができました。本当に至難の道の連続でした。カメラ開発というのは「高画質の追求」という表面に現れるところだけではなく、目に見えない裏側のところで多大な苦労を伴うことを、身をもって体験しました。

現在ではイメージセンサの高画素化・高性能化に伴い、民生式3板式ビデオカメラは高画素CMOSセンサーを用いた単板式カメラに置き換わりました。しかし、最初の機種が発売されてから約20年、高画質民生ビデオカメラの位置を保ち続けたのは、エンジニアとして非常に誇らしく思えることです。

3板式ビデオカメラ開発(企業宣伝雑誌掲載写真[2003年])

開発支援からインテリジェントカメラの自社開発へ

いま私は個人事業主として、主にクライアントの要件に応じた様々なカメラ開発の技術支援を展開しています。具体的には、①赤外線カメラのヘルスケア製品への応用、②カメラを用いた顔認証やタッチレス操作機能の適用、③イメージセンサ評価装置の開発支援、などです。クライアントの多様なニーズに合わせて、様々なコンセプトのカメラ開発に取り組んでいます。

従来のビデオカメラ開発では、高画質・小型化・低価格化を追及することが最重点の課題でしたが、最近はマイコンやシングルボードコンピュータと連結し、AIなどの高機能アルゴリズムを利用して認証・認識・センシングを行い、画像の持つ所望の特徴を抽出するという、いわゆるインテリジェントカメラの開発が主流になっています。

これらのカメラは、極端に言えば映像を出力しなくても特徴データさえ出力すれば良いわけで、カメラのコンセプト自体が大きく変化してきたとも言えます。

さらにその検出精度を上げるために、人間の目に見えない光線(赤外線や紫外線)を利用したり、画像だけでなく距離も検出して3次元画像を抽出したり、超高速度撮影したり、といった多様なカメラを用いる機会が増えています。だからこそ、カメラ開発と一口に言っても、様々な角度からクライアントの要望に合う最適な方法を見つけ出し、日程やコストも考慮しながらバランスの取れたシステムの提案することがますます重要になっていると感じています。

そして私も、カメラ開発の技術支援だけでなく、近い将来、上述のようなインテリジェントカメラを自社開発したいと思っています。これまでの経験を活かし、カメラとマイコンを一体にしたオリジナリティのある小型カメラボードを実現できたらと思っています。

歳を重ねても常に新しいことにチャレンジし、引き続き研鑽を積んでいきたいと思います。皆様のご支援、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

蛇足になりますが、カメラシステム開発とイメージセンサ開発の両方に携わった経験から「カメラ側から見たイメージセンサの高性能化推移」という記事を映像情報メディア学会の学会誌に投稿し、2022年03月号[Vol.76 No.2]に掲載されました。稚拙な内容で恐縮ですが、機会があればぜひお読みください。


A-Co-Laboについて

株式会社A-Co-Laboには、現在約100名のパートナー研究者が登録。それら研究者の持つ研究知(研究者のもつ知識や知恵。研究内容だけでなく、課題発見能力や課題解決能力なども含む)を企業の研究開発はもちろん、新規事業や様々な課題の解決に役立てています。

記事で紹介したパートナー研究者に話を聞いてみたい、自身がパートナーとして登録したいなどあれば、下記ホームページよりお気軽にご連絡ください。
A-Co-Labo HP:https://www.a-co-labo.co.jp/

またnote『エコラボnote』では、これまでの事例やQ&Aなども掲載しています。ぜひご覧ください。
https://note.com/a_co_labo/

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