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研究者インタビュー

ミトコンドリアに魅せられて神経細胞の死の謎に挑む研究者

運動神経、神経質、神経が図太い、など私たちは「神経」という言葉を日常的に使っています。しかし、そんな神経のことをどこまで知っているでしょうか?

神経は私たちの生活のいろいろなところで活躍しています。たとえば膝の少し下あたりを叩くと、足が勝手に前に出るのも神経の働きです。視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚といったいわゆる五感を感じることができるのも、神経のおかげです。そしてそれら全てが神経細胞と呼ばれる特別な細胞によって引き起こされています。

今回は、そんな「神経細胞が死んでしまう仕組み」の謎解明に挑んでいる研究者に話を聞きました。

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真野叶子

2018年に北里大学理学部生物科学科卒、
2020年首都大学東京理学研究科生命科学専攻博士前期課程卒。
東京都立大学理学研究科生命科学専攻博士後期課程在学中
国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータ

認知症、パーキンソン病、ALS……すべて神経細胞の死によって引き起こされる

―― まずは簡単に研究について教えてください。

すごく簡単に言うと「なぜ認知症やアルツハイマー病になってしまうか」ということを研究しています。

アルツハイマー病は、正式には「アルツハイマー型認知症」と言い、認知症のひとつです。これは人の記憶に関する神経細胞、特に海馬と呼ばれる記憶に重要な脳の一部にある神経細胞が死ぬことで引き起こされます。

―― 神経細胞というといろんな事に関わっていそうですが、認知症以外にもあるんですか?

アルツハイマー型認知症以外にも、運動機能が低下してしまうパーキンソン病、筋肉が痩せていってしまうALS(筋萎縮性側索硬化症)なども、神経細胞が死ぬことで引き起こされる病気であり、これらをまとめて「神経変性疾患」と言います。

これら神経変性疾患は、どこのどんな神経細胞が死んでしまうか、その結果としてどういう症状が起こるかということで病名がつけられています。

―― どの病気の原因も神経細胞なのですね。神経細胞はなぜ死んでしまうのでしょうか?

実はそれがあまり詳しくわかっていません。それを明らかにすることで、それらの病気に対する治療や予防ができるようになることを期待しています。

私たちの研究によれば、神経細胞の中にあるミトコンドリアが死に関わっているのではないかと考えています。そのため、現在はミトコンドリアと神経細胞の死がどのように関わっているのかを明らかにしようとしています。

―― 細胞というと増えていくイメージがありますが、神経細胞は増えないのでしょうか?

はい。実は神経細胞は幼少期、特に生後1,2ヶ月までに完成すると、その後は増えることができなくなってしまいます。だからこそ、未然に防いだり、進行を止めることが重要です。

―― 現時点ではどのようなアプローチがあるのでしょうか?

パーキンソン病では、現在iPS細胞を用いた治療が進められています。ただ、まだこれといった治療法が確立されているわけではありません。

また、認知症の診断は簡単ではありません。物忘れなのか、認知症によるものなのか、はたまた鬱によるものもあります。こういった診断、治療、予防にも、私たちの研究が活きる可能性があります。

―― これからの研究が重要になってきますね。具体的には、どのような方法で研究をしているんでしょうか?

私は、主にショウジョウバエという実験用のハエを用いて、様々な遺伝子や様々な条件において、神経細胞がどのようになっているのかを調べています。

具体的には、例えばショウジョウバエの習性を利用して、試験管の中での動きがどのようになっているか、を調べています。通常のショウジョウバエは、試験管の中に落とすと、試験管の上に這い上がってくるという習性を持っています。しかし、老化によって体力が減り、神経細胞が弱くなると這い上がることができなくなります。

この習性を利用して、遺伝子を変えたショウジョウバエと変えていないショウジョウバエを比較することで、その遺伝子の影響を調べることが出来ます。

―― ハエにそんな習性があるんですね。他にはどのような方法があるんでしょうか?

他には、寿命を比較したり、神経細胞がどれだけ死んでしまっているかを調べたりすることもあります。

―― そもそも記憶とは何なのでしょうか?

記憶には、いくつかのステップがあります。まずインプットする、それを記憶する、そしてその記憶をアウトプットすることです。これらのステップそれぞれに神経細胞が関わっていると考えられます。

―― それでは、無くなった神経細胞を元に戻せば、記憶が戻ったりするのでしょうか?

正直それはわかりません。が、例えば記憶をしているひきだしの役割をしている神経細胞がなくなり、ひきだし自体が無くなってしまった場合は、外から新しいものを入れてあげても元には戻らないのではないかと思います。

一方、運動神経であれば、代替はできるかもしれません。

―― 記憶と神経細胞の仕組みがわかれば、記憶力も増強できるかもしれませんね! ぜひ欲しいです!

高校生の頃のミトコンドリアとの運命的な出会いがきっかけに

―― 研究者を志そうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

中学校の頃から、疾患に関する研究をしたいと思っていて、その為にはどうすれば良いかを考えていました。

――かなり早い段階から進路を考えていたんですね。現在は、認知症という病気に関わる研究をされていますが、もともと考えていたのでしょうか?

そうですね。高校生の頃にいまの研究対象でもあるミトコンドリアに興味を持ったことが、最初のきっかけでした。そこからミトコンドリアに魅せられて、いろいろ調べるようになりました。その興味が今日まで続いています。

―― 実際に研究をしていて、好きな時間はどんなときですか?

研究では、結果をもとに考える時間が好きです。研究していると知らないことも沢山あるので、それらを学びながら、自分の考えをまとめてイメージをまとめられたときがとても楽しいです。研究には失敗が多いのはもちろんことなのですが、ゼロの状態から生まれた瞬間がいちばん面白いです!

流行や研究費の取りやすさよりも、自分の好奇心に対して正直でありたい

―― 研究をする上でなにか難しいと思うことはありますか?

研究では、基礎研究や応用研究、その時の流行などがあると感じていて、難しく感じることもあります。ただ、流行や研究費のとりやすさで研究するものではないと思っています。自分は何がしたくて、何が知りたくてやっているのかを常に考えて、科学に対しては常にフェアに、きちんと向き合っていきたいと思っています。

―― 自身の好奇心を中心に考えているんですね。どうしてそういう考えになったんでしょうか?

おそらく、高校生の頃のミトコンドリアとの出会いからきているんだと思います。ミトコンドリアに興味をもち、面白い、もっと勉強したいという気持ちになったことを覚えています。その時の自身がワクワク感じたもの、真っ白な純粋な思いでを大切にしていたいと思っています。

―― これまでの経験や考えが、全ていまの考えや立場につながっているようにいるように感じます。どんなお子さんだったんでしょうか?

あまり周囲に染まることがない、ノリの悪い子供だったと思います(笑)

もともと臆病ということもありますが、習い事で周囲の友達からサボったりする事に誘われても、ダメだよ!と言うような子供でした。そういう意味では変に大人びて、周囲からは変に思われていたかも知れません(笑)

―― 客観的に見る事が得意な反面、頑固でもありますね(笑)

そうですね、自分自身でも、様々な人の視点で考えることは得意だと思っています。

それは研究においても、研究を評価する人や実際にその疾患の患者の方など、様々な人の視点で自分の研究をみることは大事にしています。

―― 博士課程の学生と言う事で、今後のキャリアなど考えている事はありますか?

今の研究が好きなので、お金と世の中が許してくれるなら、ずっと今の研究をしていたいですね。やればやるだけわからないことが増えてきますからね笑

―― 今回はありがとうございました。

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